シャッターの向こう側。
 宇津木さんって嫌いだったのよ。

 平気で人の言われたくない所にズカズカ踏み込んでくるし。

 機嫌の悪い時には近づきたくないし。

「宇津木って確かに一言多いし、手も出るし無愛想だけど、それが嫌なら何故、席を変わってもらうとかしないの?」


 有野さんに言われて、頭をガシガシとかきむしる。

 ……私にも解るところと解らないところがある。

 1番に解らないのは、自分が受けた印象や感じ方を、人に説明する事だったりする。


「あ~…私にも上手く説明できません」

「別に上手く説明しなくてもいいよ。俺はそこを君に求めてないから」

 ふと顔を上げると、有野さんは佐和子に引きはがされて渋い顔をしている。

「…………」

 てか、面白過ぎますが。

 いやぁ~……。

「人目憚らないんですね~」

「君、加倉井の友達だからいいかなぁと」

「違うでしょ!? 今は雪の事でしょう!!」

 佐和子がバンバンとテーブルを叩き、ジロッと有野さんを見た。

「ちゃんと話をしてるよ?」

「貴方のそういう、無駄~に軽いところが大嫌いなんです!!」

「じゃ、真面目な顔してればいいの?」

 きっと、そうじゃないと思う。

 心の中でツッコミを入れ、目の前のじゃがバター箸をつけた。

 うーん……。

 醤油をかけた方が美味しい……

 思っていたら、おしぼりが飛んできた。

「痛いよ佐和子さん」

「何を他人事みたいに食べてるのよ」

「え。だって人のイチャイチャ見てても仕方がないし」

「イチャイチャじゃないわ!!」


 ならなんと呼べばいいんだ。

 唇を尖らせていると、有野さんが小さく吹き出した。
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