シャッターの向こう側。
「……神崎さんが加倉井さんの友人なのがよくわかる気がするよ」

 ……なんか喜んでいいのか、悲しんでいいのか解らないコメントですけど。

「とりあえず、真面目な話をしようか?」

「あ。はい」


 ビールを飲み、首を傾げる。

 確か、何で宇津木さんの隣をやめないか…って聞かれたんだよね?

 宇津木さんって確かにサドだし、ムカつくし、かなり傍若無人だけど……

 なんて言うかな……


「たぶん、悪意がないからじゃないですか?」

 有野さんはニッコリと微笑み、佐和子は眉を上げた。

「確かに言い方きついし、たまにコノヤロウと思うこともありますけど、言ってることって納得できるような事ですもん」

 言い方が問題なだけで。

「なんだ、知ってる訳だ」

「いえ。組んで初めて思った事です。それまでは単なる嫌な奴でした」

 うんうん。

「……神崎さんって、不思議な人だね」

「え?」

 有野さんは初めて真面目な表情で、マジマジと私を見た。

「それで、何で宇津木に相談しない訳?」


 何で……って言われても。


「何か……変わったような気がするんですよね」

「何が?」

「宇津木さんの態度。妙に優しくなったというか、手加減してると言うか」

 そりゃ、仕事に対しては今まで通りにケチョンケチョンにされるけど、手が出てこなくなったなぁ……。


「…………」

 私はマゾじゃないから!

 そ、それでもいいんだけどさ!

「変わった? 宇津木が? それはある意味凄いことだけど」

 有野さんの言葉に我に返る。

「すごいことなんですか?」

「うん。これでもアイツが新入社員の頃から見てるからね、俺」

 有野さんは淡々と呟いて、気を取り直したように顔を上げた。
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