シャッターの向こう側。
「まぁ……じゃ、仕事では問題ないと。とすると、ネックはプライベートな事になりそうだけど、俺がそこまで踏み込んでいいものなのかな?」

 考えるようにして呟かれ、私も頬杖をつく。

 うーん。

「……人生の先輩に相談するのが一番ですかね?」

「ぇえ!? 俺って、そんなにおじさんじゃないよ!?」

 私も有野さんがそんなに年上とは思ってもみないですが。

「傷つくなぁ。これでも気分は若いつもりなんだけどさ」

「そんなこと言ってる人は、相当オヤジさんなんですよ」

 佐和子が密かに吹き出したけど、それにお互い気付かないふりして、天井を見る。

「あれだよね。神崎さんて坂口と付き合い始めたんだよね?」

「はい」

「仕事もうまく行き始めてる、新しく恋人もできて普通は浮かれるもんじゃない?」


 浮かれ……はしなかったかな。


 坂口さんの告白を嬉しく思ったのは確かだけど。

 嬉しく思っただけでもある。

「私にはまだ早かったんでしょうか」

「……何が?」

「人とのお付き合いです」


 恋と仕事。


 夢と恋愛。


 何故か、漠然と両立しない気がする。

 どちらかに偏って、どちらかが疎かになるような……


 そんな気がする。


「ねぇ。神崎さん?」

 有野さんは眉を寄せ、見返してくる。

「はい」

「一つ聞いてもいい?」

「はい」

 答えられることでしたら。

 見つめ返していると、有野さんは難しい顔をしながら首を傾げた。


「君は、誰に恋してるの?」

「…………」


 私は、誰と恋をしているんだろう?


 坂口さんとのお付き合いは……

 あれは恋と呼べるんだろうか?














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