シャッターの向こう側。

連絡……もしくは言葉

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 休日。

 ゆっくり朝寝坊をして夏の暑さに起きると、しっかり太陽は南向きで時計の針は12時過ぎを指していた。


 寝過ぎたな。


 なんとなくぼんやりする頭で起き上がり、冷蔵庫の中からお茶のペットボトルを出す。

 洗いたてのコップを出して、お茶を注ぎながらべたべたするTシャツを身体から引き剥がした。


 昨日、あれから黙り込んだ私に気を使ってか、それとも最初からそうすることが目的だったのか、有野さんは不機嫌そうな佐和子を連れて帰ってくれた。

 どうにもスッキリとしない感じ。

 そもそも、どうして自分が撮った写真なのに、自分で何を撮りたかったのか解らなくなるんだろう?


 そんな事なんて一度もなかったと思う。

 撮りたい、と思って来たものを撮ってきたから……

 その時にどんなだったのか、その時に何を見つけたのかも解っていたと思う。

 なのに、それが解らなくなっている。

 まだ整理途中になっているアルバムを山を見た。


 そう言えば……

 ガサガサと山の中から薄い高橋写真館の封筒を探す。

 一番最初に現像した、白黒フィルム。

 それから、一番最初に撮った写真。

 宇津木さんが、木の葉を見上げる姿。

 これを撮った時も、なんとなく撮ったような気がする。


 なんとなく……


 撮りたくなって。


 スマホの着メロが鳴って、写真から顔を上げた。

 休日に連絡してくる人なんて滅多にいないんだけど、佐和子?

 スマホの画面を見て眉を上げる。


「もしもし?」
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