シャッターの向こう側。
「……それで。面白そうな人を引き連れてきたわけなんだな?」

 無事に待ち合わせ場所に着いたら、お祖父ちゃんは感慨深げに頷いて、宇津木さんと冴子さんを眺めた。

「わー。ダンディよ! ダンディ!」

 小さくはしゃいでいる冴子さんはともかく、宇津木さんは何故か固まっていた。

 ……見ようによってはダンディかも知れない。

 口髭だし、白髪混じりのボウボウ頭はどこかの元首相みたいだし。

 珍しくサングラスなんてかけてるし、年の割に健康的な色黒でたくましいし。

 体格はニンニクなんとかの宣伝のムキムキお祖父ちゃんみたいだけど……

 これでも御歳75歳だからね?

「はじめまして~」

 ニコニコ冴子さんにお祖父ちゃんは微笑んで、ふっと固まったままの宇津木さんを見た。

 それから、サングラスをずらし、宇津木さんを覗き込む。


「あれ。君……どこかで会った事があるね?」

 え?

「知り合いですか?」

 キョトンとした私に、お祖父ちゃんがサングラスを外してニッコリと笑った。

「ああ。どこだったかな、会っていると思うが……」

 あ。

「神崎修也……さんですよね?」


 ぁぁああああ!!

 宇津木さんは呟いて、ガッと私を振り返った。

「お前っ!! 何でこの人の孫なんだ!」

 ぇえ!? そんな事言われてもさ。

「なんでって言われても……」

 もじもじすると宇津木さんは難しい顔をして、お祖父ちゃんは満面の笑みを見せた。

「それはそうだろう。この子は専門学校時代それで苦労してるからね。自力で立ちたいと思っている子には親の……というか、祖父の名前は弊害にしかならん」


 その通り。

 写真家・神崎修也の名前なんて邪魔にしかならない。

 そりゃ、お祖父ちゃんはいい先輩で、いい師匠だけど……

 いつまでもお祖父ちゃんに頼っていたら、それは〝私〟の写真じゃなくて、お祖父ちゃんのマネをしている〝私〟の写真になっちゃうから……

 そう思って専門学校に行った私だけど、お祖父ちゃんの名前が本当に邪魔になるとは思ってもみなかったりした。
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