シャッターの向こう側。
「いつも言うことには気をつけなさいと言っているだろう。お前はなんとなくで言う事が多いから」

 そんな悲しい小言をもらいながら場所を移動し、お祖父ちゃんが日本に帰って来たら必ず寄ると言うお店までタクシーで向かった。


「じゃ、秋まで日本にいるんだ?」

 こじんまりとしたお座敷でお蕎麦を食べながら、寛ぎモードのお祖父ちゃんを眺める。

「秋の写真展の審査員もするからな。いちいち日本から出ていたら疲れる」

「そんな事言いながら、この間はオーストラリアまで行ったくせに」

「あっちはいいぞぉ。のんびりしていて」

「コアラは見たいな」

「お前は撫でようとするからダメだ」


 ちっ……


「それで、こちらの仕事は順調か?」

「うん……」

 天麩羅は美味しそうだけど、なんとなく食欲が無くなってお蕎麦を見た。

「仕事楽しい」

 ……てか、楽しくなって来た。

「なんだ、私生活は面白くないのか」

 ……うーん。

「恋人が出来たよ」

「それは良かったな」


 ……それだけ?


 仮にも可愛い孫娘に彼氏が出来たのに、反応うす~い。

 お祖父ちゃんはちらっと私を見て、それから微かに苦笑した。

「お前がアッサリ言うからな。それなりのアッサリした付き合いなんだろう?」

「そんなこと……!!」


 ……なんとも言えない。


「お前は昔から解りやすいからなぁ。またなんとなく付き合い始めたんだろうが」

 ……嬉しかったんだもん。

「お前から好きになった男なんて、学生の頃だけじゃないか」

「え? それはアメリカに行くんだ! とか言うことだけ大きかったアイツ?」

「ああ。あのパスポートも無しに旅券を取って立ち往生した……違うぞ!」

 解ってたけど、お祖父ちゃんノリがいいから。

「お前が高校の時、何も行動しないて終わったとか言ってた男がいたろう?」

「……また、古い話を持ってきたね」

「それくらいじゃないか。お前が本気だったのは」

 ……そうかも知れないなぁ。

 思えば、私も若かったと……

「懐かしむには早いぞ」

 言われてギクリとした。
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