シャッターの向こう側。
 思えば、最初から〝これでいいのか〟考えていた気がする。

 日々の日常に埋没して、あまり考えてもいなかったけど。


 ……実際、考えていなかったのがそもそも問題点でもあった訳で。


 そんな奥底にある根本的な問題が、日を経つ毎に罪悪感として蓄積されていった様な気がする。

 ……坂口さんは、きちんと私を好きだと言ってくれているのに。

 私は同じ様には見れなくて。


 申し訳ない……。


 そんな気もしていた。


 でも。

 このまま付き合っていたら、坂口さんの優しさに付け込んでいるだけの様なきもする。

 好きだと言われている事に、甘えている自分がいる。

 それは、恋人同士と言える関係じゃない様な気がする。

 電車を降り、歩きながらバックからスマホを取り出した。



 このまま何事もなく、時が過ぎるのを待てばいいと思う自分もいる。

 だけど……

 それじゃ、惰性にしか過ぎないでしょ?

 人を傷つけてまで我を通すつもりか……と言われれば、それまでかも知れない。


 でも、このままじゃ、苦しい。

 息が詰まってしまう。


 自分を押し込めてしまえば、それもいいのかも知れない。

 でも、結局、どちらも傷ついてしまう気がする。


 私は善人にはなれない。


 スマホの画面を開いて、アドレス帳を呼び出した。

 耳にあてると、機会的なコール音が聞こえてくる。


『もしもし……』

 どこか沈んだ声に、決心が鈍りそうになりながら口を開いた。















< 182 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop