シャッターの向こう側。
初秋……もしくはハプニング
******
秋空に赤蜻蛉。
清々しい空気に、自然な風。
ああ、いいな。
このアングル。
「ボ~っとしてるな」
と、メガホンで殴られて、振り返る。
「叩かなくてもいいじゃないですか」
「……さっきから呼んでるのに、気付かないお前が悪い」
メガホンを手にしている宇津木さんの後ろに、苦笑している有野さんの顔。
「え。あ……。呼んでましたか」
「何度もな」
それはそれはすみませんね。
「これからリハーサル入るから、お前が邪魔なんだと。だからこっちに待機」
襟首を持たれて、ズリズリと引っ張られる。
だからね、あんた。
「……宇津木さん。私、猫じゃありませんから」
「ああ? そんなの当たり前だろ」
「常日頃、猫扱いされている様な気がしないでもないんですが」
宇津木さんは掴んでいる手元を見て、それから私の顔を見た。
「お前、ちびだからな」
にゃにおぅ!?
いきり立つ前に腕を掴まれ、またズリズリと引っ張られる。
……ああ、成る程。
高低差があるから、腕が掴みずらかったと……
どっちにしろ失礼だな……っ!!
あんたが無駄に高いだけじゃないかっ!!
「おっしゃって頂ければ歩けます!!」
「黙ってたらプライベートに走りそうだからな。お前」
言われてグッと押し黙った。
今日は『春のウェディング』と銘打った宣伝のコマーシャル撮り。
コマーシャル業界は、秋に近いのに春なんですね~。
有野さんと宇津木さんがディレクターをするって事で、テレビ向けのコマーシャルなのに何故か私も引っ張り出された。
「何かいい絵が撮れそうか?」
野外に機材を持ち込んだテントで、宇津木さんが絵コンテを片手に早くもコーヒーを飲んでいる。
「うーん。テレビ媒体は季節感がないって本当ですね~」
「気分は春じゃなくて、秋モードか」
だって、蜻蛉が飛んでるし?
「いいか、ピヨ」
「はい?」
宇津木さんは両手の指で四角を作って差し出す。
……それが何か?
秋空に赤蜻蛉。
清々しい空気に、自然な風。
ああ、いいな。
このアングル。
「ボ~っとしてるな」
と、メガホンで殴られて、振り返る。
「叩かなくてもいいじゃないですか」
「……さっきから呼んでるのに、気付かないお前が悪い」
メガホンを手にしている宇津木さんの後ろに、苦笑している有野さんの顔。
「え。あ……。呼んでましたか」
「何度もな」
それはそれはすみませんね。
「これからリハーサル入るから、お前が邪魔なんだと。だからこっちに待機」
襟首を持たれて、ズリズリと引っ張られる。
だからね、あんた。
「……宇津木さん。私、猫じゃありませんから」
「ああ? そんなの当たり前だろ」
「常日頃、猫扱いされている様な気がしないでもないんですが」
宇津木さんは掴んでいる手元を見て、それから私の顔を見た。
「お前、ちびだからな」
にゃにおぅ!?
いきり立つ前に腕を掴まれ、またズリズリと引っ張られる。
……ああ、成る程。
高低差があるから、腕が掴みずらかったと……
どっちにしろ失礼だな……っ!!
あんたが無駄に高いだけじゃないかっ!!
「おっしゃって頂ければ歩けます!!」
「黙ってたらプライベートに走りそうだからな。お前」
言われてグッと押し黙った。
今日は『春のウェディング』と銘打った宣伝のコマーシャル撮り。
コマーシャル業界は、秋に近いのに春なんですね~。
有野さんと宇津木さんがディレクターをするって事で、テレビ向けのコマーシャルなのに何故か私も引っ張り出された。
「何かいい絵が撮れそうか?」
野外に機材を持ち込んだテントで、宇津木さんが絵コンテを片手に早くもコーヒーを飲んでいる。
「うーん。テレビ媒体は季節感がないって本当ですね~」
「気分は春じゃなくて、秋モードか」
だって、蜻蛉が飛んでるし?
「いいか、ピヨ」
「はい?」
宇津木さんは両手の指で四角を作って差し出す。
……それが何か?