シャッターの向こう側。
 そんな感じに、近場のレストランに来てる訳なんだけど……

 壁は深い色合いのレンガ。

 その中央壁際に暖炉。

 暖炉の上にはココナッツをくり抜いて作られたエキゾチックな人形。

 窓には貝殻のアクセサリー。

 天井には回転式のファン……

 目の前にはピシッと糊の効いた赤チェックのテーブルクロスに、カントリー風の椅子。

 メニューは焼き魚定食など、日本風。

 そして、目の前には不可思議な表情の宇津木さん。

「この店は、何を主体にしたいんだろう」

「……私に聞かないで下さい」

「……俺にも聞くなよ?」


 聞きゃしませんて。

 とにかく、お昼は食べなきゃいけないから……

 エビフライとクリーミーコロッケのランチか、焼き魚定食にするか……


「宇津木さんのおごりですか?」

「……金欠か?」

 蹴飛ばしたくなったわ。

「お前。給料を何に注ぎ込んでるんだよ。2年もいれば、そこそこの稼ぎがあるだろうが?」

「この間、レンズを割っちゃいまして。ちょっと覗きに行ったつもりが、三脚だのバックだのと……」


 カメラ用品は充実☆

 その代わりに、お財布は寂しい~。

「……成る程な。ピヨが化粧品に注ぎ込んでるとか言ったら、それこそ驚きだが」

「基礎化粧品くらいはいいもの選んでますよ」

「女は大変だな」

「男性は楽ですか?」

「それなりに大変だな」

 ……何が大変なんだろう。

「パスタでもいいか?」

 ん?

「……また勝手に選ぼうとしてます?」

「お前、選ぶの遅いし」

「そんな事ないですよ」

「いや、遅い。社食のA定食かB定食かってだけでも5分は悩んでるだろ」

 目を丸くして顔を上げると、宇津木さんはメニューを眺めて涼しい顔。

「……よく、知ってますね」

「ああ。ガラスケースの前で百面相してるのはお前くらいだな」

 そうじゃないでしょ。

 思わず目を細めると、宇津木さんが小さく笑った。

「眺めてたら面白くてな。壁に激突する、椅子に座ろうとしてこける、急に大声を出す」

 ……おい。

「そんな記憶は無くしましょうか?」

「遠慮しておく。じゃ、このパスタ2つ」

 ……て、いきなり近づいて来たウエイトレスさんに注文かいっ!!
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