シャッターの向こう側。
 ……こんの男は。


 ムカつくから、復讐だ!!

「あ。ここモンブランもあるんですね~」

 メニューを持った宇津木さんの手が微かに動く。

「はい。自家製ケーキなんですよ。当店の人気No.1なんです」

 にこやかなウエイトレスさんの答えに、宇津木さんはメニューを睨み付けた。

「…………」

 ふふん。

 どうでるかな?


「……モンブラン2つ」

「かしこまりました」

 よし、デザートもゲット☆

 テーブルの下でコッソリとガッツポーズをしたら、軽く蹴られた。


「確信犯め」

「……気のせいですよ」

 間違いなく狙ったけど。

 てか、

「モンブランがホントに好きなんですね」

「……栗が好きなんだ」

「天津甘栗とか?」

「……だな」


 意外だ。

 宇津木さんて、見た感じどっから見てもエリートクリエーター。

 服装は確かにいつも軽装だけど、しっかりお洒落だし。

 天津甘栗を剥いてる姿は想像つかない。

 って言うかさ……

 想像したら……

 にやんと笑って宇津木さんを見た。


「カワイイ……」

「お前に言われたくない」

 すかさず否定された。

「たまには言われて下さいよ~」

「お前はいつも言いたい放題だろ」

「宇津木さんもじゃないですか」

「お互い様と言うわけだな」

 締め括るなよ。

 どこか妙に可笑しくなって吹き出した。

「宇津木さんて……」

 結構、おもしろい人なんだな。

 狙って面白い事を言っているわけでもないと思うんだけど、真面目だから余計に妙だというか。

 クスクス笑っていたら宇津木さんも少しだけ唇の端を上げた。

「気分は良くなったか?」

「は……?」

「この頃また暗かったから」

 お水を飲みながら宇津木さんは足を組み、軽く首を傾げている。

「写真にまた出てましたか?」

「いや。今回は顔か? また何を悩んでるんだ?」

 揶揄するような言い方だったけど……

 真っ直ぐな眼に視線を逸らした。
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