シャッターの向こう側。
 仕事に迷っている訳じゃない。

 と言うか何かに迷っている訳じゃない。

 私の出した結論を納得しない人がいる。


 それだけだ。

「……宇津木さんには相談できない事ですから」

 あの日。

 お祖父ちゃんとのご飯の後。

 私は私なりの結論を出した。

 このまま中途半端に付き合うのは、私にとっても、坂口さんにとってもいい事じゃないと思う。


 それを告げ、別れを切り出した。


 だけど、坂口さんは『納得できない』と告げたまま電話を切ってしまった。

 何もかもが中途半端で、すべてが中途半端に見えてすっきりしない。

 よくよく考えてみなくても、宇津木さんて坂口さんと仲がいいわけだし、こんなこと相談できるわけもなく。

 無言になったら頭をグシャグシャにされた。


「ひゃ……っちょ……!!」

「お前は素直だけどたまに頑固だな」

 言われてちらっと視線を上げる。

「ホント……お前は解りやすいようで解りにくい」

 呟く様な宇津木さん。

 その視線は嫌なものではなく、どちらかと言うと温かいものだったけれど……


 何故か無性に泣きそうになった。


 自分で自分が解らない。

 何がどうなっているのか解らない。

 何故、寂しく思うんだろう?

 どうして、泣きたくなるんだろう?

 答えなんて出ないまま、無言で運ばれてきたパスタを食べ、撮影場所に戻った。






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