シャッターの向こう側。
風邪……もしくは秋風
******
「ハックション!」
「……汚い」
くしゃみをしたら、隣の席から小さな呟きが聞こえてきた。
2日前、大雨にあたったのがいけなかったのか、濡れたままの服で車のエアコンにあたっていたのが悪いのか……
どうも風邪っぽい。
「ちゃんと手で押さえてまずがら゙」
「鼻をかんだらどうだ? 気持ち悪い声だぞ」
気持ち悪いは言い過ぎだろうが。
「もうないんですもん……」
鼻のかみ過ぎでティッシュの箱はカラ。
コンビニ行かないと買えないけど、昼休みは終わったし、終業まで1時間もある。
「ずびばぜんね」
「すでに何を言っているかも解らん」
ティッシュの箱を投げられて、上手くキャッチした。
思う存分鼻をかんで、丸めたティッシュをごみ箱に捨てる。
「ありがとうございます」
鼻の皮がむけそうだよベイベー。
ボンヤリとパソコンのモニターを眺めていたら、宇津木さんがファイル片手にこっちを見たのが視界の隅に入った。
「薬は飲んだのか?」
「一応」
「早退すれば? 17時なら、まだ受け付けやってる病院がある」
ちらっと見ると、宇津木さんは何かの名刺の様な紙を差し出していた。
「……病院。嫌い」
「お前はガキか」
だって嫌い。
あの独特の消毒液の臭いとか、明るいのに暗い雰囲気とか好きじゃない。
「あのな。そんなだと、治るものも治らないぞ」
「大丈夫です。すぐ治りますって。それにコレ……今日中にまとめちゃいたいですし、それさえ終われば」
明日は週末だし。
あの『春のウェディング』の写真。
例の如くデジカメは却下されたから、使ったのはフィルム一眼レフだし、現像に一日費やして今日まとめて届いた。
見ながらちょっとだけ咳込む。
あ~……喉にもきた。
でも、体調管理も社会人のお勤めですから。
これくらいで早退したら、女が廃る。
そんな感じで仕事を続け、終業時間10分前、なんとなく仕分けた写真を宇津木さんに差し出した。
「ハックション!」
「……汚い」
くしゃみをしたら、隣の席から小さな呟きが聞こえてきた。
2日前、大雨にあたったのがいけなかったのか、濡れたままの服で車のエアコンにあたっていたのが悪いのか……
どうも風邪っぽい。
「ちゃんと手で押さえてまずがら゙」
「鼻をかんだらどうだ? 気持ち悪い声だぞ」
気持ち悪いは言い過ぎだろうが。
「もうないんですもん……」
鼻のかみ過ぎでティッシュの箱はカラ。
コンビニ行かないと買えないけど、昼休みは終わったし、終業まで1時間もある。
「ずびばぜんね」
「すでに何を言っているかも解らん」
ティッシュの箱を投げられて、上手くキャッチした。
思う存分鼻をかんで、丸めたティッシュをごみ箱に捨てる。
「ありがとうございます」
鼻の皮がむけそうだよベイベー。
ボンヤリとパソコンのモニターを眺めていたら、宇津木さんがファイル片手にこっちを見たのが視界の隅に入った。
「薬は飲んだのか?」
「一応」
「早退すれば? 17時なら、まだ受け付けやってる病院がある」
ちらっと見ると、宇津木さんは何かの名刺の様な紙を差し出していた。
「……病院。嫌い」
「お前はガキか」
だって嫌い。
あの独特の消毒液の臭いとか、明るいのに暗い雰囲気とか好きじゃない。
「あのな。そんなだと、治るものも治らないぞ」
「大丈夫です。すぐ治りますって。それにコレ……今日中にまとめちゃいたいですし、それさえ終われば」
明日は週末だし。
あの『春のウェディング』の写真。
例の如くデジカメは却下されたから、使ったのはフィルム一眼レフだし、現像に一日費やして今日まとめて届いた。
見ながらちょっとだけ咳込む。
あ~……喉にもきた。
でも、体調管理も社会人のお勤めですから。
これくらいで早退したら、女が廃る。
そんな感じで仕事を続け、終業時間10分前、なんとなく仕分けた写真を宇津木さんに差し出した。