シャッターの向こう側。
 起き上がりかけ、宇津木さんの手でガッシリ頭を掴まれる。

「いいから寝てろ」

「寝てられません。お祖父ちゃんに人様に迷惑をかけるなと言われてます!」

「すでにかけてるだろうが!!」


 ぼすっと頭を枕に押しつけられた。


 容赦がなさ過ぎる。


「宇津木さんて、雪の扱いを心得てるんですね」

 佐和子っ!!

 なんで感心してるのー!?

「はい、薬。はい、飲んで?」

 ニッコリ有野さんに薬を渡され、コソコソ話を始めた宇津木さんと佐和子を睨む。


 なんなのよ。


 なんかムカつく感じだわね。


「病院は行きませんからね!」

 宇津木さんはちらっと睨んできたけど、そのまま何も言わずに3人で寝室を出て行った。


「…………」


 独りで残されると……ちょっとだけ寂しくなる。

 と言うか、佐和子はともかく、何であの二人はちゃっかりうちに上がってるわけ?

 なんだか釈然としない。

 って言うか、風邪薬ってどうしてこんなに眠くなるんだろう。


 あくびをしつつ目を瞑る。


 そうしているうちに気がつけば眠っていて……





 ……で。

 何がどうなってるんだろう?


 翌朝、目が覚めて目を丸くする。


 ベットの端に寄り掛かる様にして眠っている佐和子。

 その隣に有野さん。

 ……で、枕元に私の手を握っている宇津木さん。


 どうしたことだ?


 クエスチョンマークを浮かべた私に目が覚めたのか、宇津木さんが身じろぎして顔を上げる。


「……起きたのか?」

「……おはようございます」

 いや~……。

 起きぬけの顔も観賞に堪えれるなんて、宇津木さんてホントに綺麗な顔してるわ。

 なんて思っていたら、すっと手が伸びて来てドキッとした。


「……少しは熱が下がったか」


 おでこに触れる手が、ひんやりとして気持ちいい。


 思わず目を瞑りかけて……


「また眠る前に手を離せ」


 ぎょっとして握っていた手を離した。
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