シャッターの向こう側。
ハイカラー

古の歌……もしくは意識下

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「秋風に、絶えず散り行く紅葉ばの、行方定めず、我ぞ悲しき」

 by 詠み人忘れた。

「……何故イキナリ短歌なんだ?」

 隣の言葉に、思わず首を傾げる。

「57577って、短歌なんですかね」

「俺が知るかよ」

 ごもっとも。

 何となく始まった週明け。

 いつも通りの朝。

 宇津木さんからは挨拶を無理矢理もぎ取り、これまた何となく吟じてみた。


「歌意は?」

 ……おや。

 珍しい、宇津木さんが乗ってきた。

「秋の風に乗って、散りながらあっちこっち行っちゃう紅葉の葉っぱみたいに、どうなっちゃうんだろって歌でした」

 本当は、どこに行き着くか、自分の心が解らないって歌なんだけども。

 何故か乙女チックメーターが、とっても振り切れて、何となく覚えている歌なんだよね。


「……珍しく何か考えてるのか」

「珍しくは失礼でしょ」

「お前は思い付くまま突っ走るから」

 それは間違いない。

 パソコンに映し出したデーターを見ながら、腕を組む。

 確かに、私って深く考える事って少ないのよ。

 ただ、最近はよく考えさせてくれる事が多いかも。

 仕事の事だったり、夢の事だったり。

 坂口さんの事だったり。

 加納先輩の言葉や、お祖父ちゃんの言葉も考える。

 それから、急に優しい宇津木さんも。


 いや。

 急にって訳じゃないかも知れない。

 だけど、いつから……とも、なんとも言えないんだけどさ。

「ピヨ」

「はい?」

「こないだの写真、ちょっといじっていいか?」

 あら……珍しい。

 いつもそのまま使うのに。

「画像処理なら、私が……」

「いや、映像と合わせたいから。こっちでさせてもらっていいか?」

「見てもいいですかぁ?」

 モニターを見たままの宇津木さんに近寄って、その画面を覗き込む。

「あのな。ここではしな……」

 宇津木さんが急に振り返り、


「っ………!!」


「うわっ」


 鼻先スレスレの間近に端正な顔。

 椅子やらファイルをなぎ倒し、お互い慌てて離れた。
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