シャッターの向こう側。
 今……っ!!


 本当にスレスレだったわよ!!


 デスクに張り付いた宇津木さんと、尻餅をついた私。

 お互いにびっくりして目を合わせた。


「……驚いた」

 それは私も一緒です!

「お前は……突飛すぎなんだよ」

 いやぁ……その。

「……ごめんなさい」


 とりあえず謝っておこう。

 手でパタパタ自分を扇いで急いで立ち上がると、宇津木さんは髪をかきあげ肩を落とした。

「映像は有野さんとこだから。俺は許可取っただけ。じゃないとお前うるさいし」

 ……あ。

「……そ、そうでしたか」

「ああ。映像加工は有野さんの方が上手いから」

 そう言ってパソコンに向き直ってくれたので、落ち着いて椅子に座り直せた。

 ……でも。

「宇津木さんが誰かを評価するなんて、かなり珍しいですね」

「別にけなした覚えもないが」

「だって、褒めることもないじゃないですか」


 宇津木さんは鋭い視線で振り返る。


 ……な、なんですか。


「ピヨ」

「……はい」

「俺は成長しそうにない奴を〝ヒヨコ〟なんて呼ばない」

「…………」


 あれは褒めてたのかっ!?


「馬鹿にしてると思いました」

「馬鹿にする程、俺は偉くない」

 いやいやいや。

 あなた十分に偉そうだったから。

「……たまにはするが」

「するんじゃんか」

 言った瞬間げんこつをもらった。

「あいたっ!!」

「一言多いんだ!」

「宇津木さんだって人の事は言えないんだけど」

「悪かったな」


 自覚ありって厄介だ!


 でも、まぁ。

 少しは自惚れてもいいと言う事かな。

 しっかし、このポカスカ叩く所と言動に気をつければイイ男なのに。


「……ホントだ。見てて飽きないね」

 低い声に瞬きして顔を上げると、微笑みを浮かべた有野さんが立っていた。

 ……この人も背後にコソッと立つのが癖なんだろうか?


「風邪はスッカリよくなったかい?」

「あ。はい。おかげさまで」

 頭を下げると、有野さんはウンウン頷いた。
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