シャッターの向こう側。
 うまくいってるも何も、私からは『お別れ』を切り出したんですが。

「……何か聞いてますか?」

「女じゃあるまいし」

 つまり、聞いてない訳ですか。

「てか、何故、宇津木さんがそれを気にするんですかね?」

 宇津木さんは眉をしかめ首を傾げた。

「……お前、すぐ仕事に影響が出るから」

「今回、出なかったんじゃ?」

「……妙な所を覚えてるな」

 苦々しい呟きに、少しだけ苦笑。


 私だって、覚えてる事もある。


「隣で暗い顔されてれば、それなりに気になるもんだろ」

 そんなに気になる程、暗い顔をしてたんだろうか?

 首を傾げると、宇津木さんは舌打ちをして立ち上がった。


「いい。酔っ払いの戯言だ。聞き流せ」

「はぁ……」

「帰るぞ」

「あ。もう頭は平気ですか?」

 立ち上がりつつそう聞くと、不機嫌そうな視線が降ってくる。

「……頭は平気だ」

「…………」

 んん?

 あ。

「いや。そうじゃなく、頭痛は治りましたか?」

「さっきよりはいい。それに終バスがなくなるぞ? お前は駅からバスだろう?」

「ああ。はい。よくご存知……」


 って、前に住んでいたんだっけ。


「まぁ、気にしなくていいですよ。歩いても帰れますから」

 駅に向かって歩き出した私の頭を、宇津木さんはガシッと掴む。

「あのな。お前はどうして自分が女だと認識しないんだ」

「れっきとした女ですよ!」

「やってることが女らしくないんだ。おかげで面倒だ」

「何がですかっ!!」

「いろいろとだっ!!」


 ワケわかんないから!



 そんな感じに言い争いをしているうちに終バスどころか終電も逃し、仕方なく宇津木さんに便乗しながら、タクシーで帰ることになった。



 だって、給料日前なんだもの。















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