シャッターの向こう側。
「指示を出せば言われた通りの写真を撮って来られる。ある意味、技術はある訳なんだよな?」

 あの……

 聞かれても困るんですが。

「……そうすると相殺される訳なんだ」

 一人でブツブツ言い始めた宇津木さん。

 ……正直。

 眺めるしか出来ないですが。


「つまり」

「は、はい?」

「お前は自分の感覚に合わせるだけの技術がまだない」

 ……えーと?

 つまり、全然ダメダメってこ……


 ウキ─────!!


「うわっ」

「馬鹿にしてるでしょ! ホントに宇津木さんってムカつく~!!」

 ポカポカ叩き始めると、びっくりしたみたいな顔で叩きをかわす宇津木さん。

 てか、避けるなコラ!

「ちょっ……お前……」

「どうせ技術なんかはないですよっ!! 下手くそですよ~」

「あのな……っ今のをどこをどう聞いて下手くそって聞こえたんだ!?」

「聞こえました~!!」

「あのなぁ!」

「聞きたくない~!!」

「あー、面倒くさい!!」

「……っ!?」


 ……あれ?


 気がつけば目の前に見える風景が反転して、月光に背を向けた宇津木さんの影。

 その影が、私の上にのしかかる様に……

 てか、宇津木さんの膝に私の頭?

 引き倒された?


「技術なんてのは、そのうちにつくもんなんだ。感覚なんてのは、覚えようと思っても覚えるもんじゃない!」


 お構いなしに怒鳴る宇津木さん。


「感覚が異常なんだ! お前の感覚は誰の影響か知らんが異常に高い。そこに技術が追い付かないのは当たり前なんだ!」

 は、はい~!!

「解ったか!?」

「解りました~! だから離して~!!」


 叫んだ瞬間、沈黙が落ちた。


 そのまま無言で起こされる。


 座り直すと、宇津木さんはくるりと背を向けた。


「……子供みたいになると困る」
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