シャッターの向こう側。
 いやいやいや。

 困るのこっちだし。

「……まぁ。誰の影響かは解った気がするが」

 ポツリと言われた言葉に、髪を直しながら首を傾げる。

「影響……ですか?」

「お前の祖父さんが神崎修也だとはなぁ」

 宇津木さんの溜め息が聞こえた。

「お前の話を聞いてると、かなり傾倒してるもんな」

「ま、まぁ」


 そうかも……

 と言うか、実際そうだったから、専門学校に行ったんだけど……

「お祖父ちゃんは、一応、人物写真家ですが」

「お前は風景だろ?」


 あれ……

 宇津木さんに言った事、あった?

「よく解りましたね」

「コンクールの写真みてりゃ……」


 そう言えば……

「宇津木さんて、うちの祖父ちゃんに会った事あります?」

「なんで?」

「祖父ちゃんが、宇津木さんの事を会ったことあるって言い方してたから」

「…………」


 あれ。


 だんまり?


「それはそうとピヨ」

「はい?」

「つまりはアレだ」

「アレ?」

「昔の写真の方がいいって思うとしたら、昔の写真の方が感覚と技術が合致して見えたんだろう」

「は、はぁ?」


 イキナリ話が戻った?


「技術も感覚も成長してると思うから、よく見ると違うと思うがな」

「…………」


 うん。


 何故、話がイキナリ変わったかは解らないけど……


 ひとつ解ることがある。


「回りくど……っ」

「お前が言ってもすぐに理解しないからだろうがっ!!」

 宇津木さんの叫びが、夜の原生林に響き渡った。















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