シャッターの向こう側。
 この人も失礼な人だな。

 さすが、宇津木さんの先輩なだけはあるよ。

「有野さんは、佐和子にプロポーズしたんですってね」

「……随分イキナリだね」

「さっき、未来の嫁さんがどうのって言ってたじゃないですか」

「うん。俺はそのつもりだけど」

 軽く言われて、溜め息をついた。

 佐和子は恋愛に対して、少し厳しい時がある。

 まぁ……あんな経験しちゃうとそうならざる得ないと言うか。

 この人のノリだと、シャットアウトは必須だろうな。

「軽いノリで攻めるのは厳禁ですよ?」

 呟くと、有野さんは小首を傾げながら私を見た。

「結構、真剣だけど。寄り道する程、若くもないし」

 見た目は若いですけど。

「あれです。有野さんのそのノリは、前にあの子が付き合っていた人と重なるって言うか、似てるんです」

「……具体的にどうぞ?」

 ちょっと真面目な顔をした有野さんを眺めながら、微かに微笑む。


 私の呟きを受け入れた……

 って言うことは。

 本人が言うように本当に本気なのか。

「私も2・3回しか会ったことはないですが話し方がそっくり。後は佐和子の印象としては、真剣な話をしている時にふざけたり、強引な所があったみたいです」

「……なるほど?」

 有野さんは難しい顔をして、ふっと眉を上げた。

「何故、急に教える気になったの?」

「それは、有野さんが真剣だからでしょうね」

 そんなに恋愛経験はないけど、その人が真剣かそうじゃないか…なんとなく解ると言うか、解ったと言うか。

「説明するのは難しいですが」

「君は理論的な説明は苦手だろうね」

「うわっ。有野さんまで私を馬鹿にするんですか!?」

「はい?」

 キョトンとした有野さんに詰め寄る。

「宇津木さんに始まって、皆、何も考えない人間みたいに言うんだから!」

「だって、そうだから」

 飄々と言われて頭を抱えそうになった。

 私の回りには、歯に衣着せない人が多すぎやしないか?

「でも、いいんじゃない? いいものは良いと素直に評価出来る感覚って言うのは、この業界ではとても良いことだと思う」

 そうですか?
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