シャッターの向こう側。
「君は何をするにも、感じたままで物事を判断するでしょう?」

 まぁ……あまり理論的な選び方はしないかも。

「例えば、この作品はああだから素晴らしいとか、こっちの作品はこうだからなってないとか、そういう見方はしないよね?」

「はぁ……」

 作品なら、好き勝手に選びますが。

「悪く言えば野性的」

「はぁ!?」

「よく言えば、感覚に優れていると言う訳だよ」

 有野さんは笑って頷いた。

「子供の頃なら誰でも持ってる感覚だけどね。歳を重ねる毎に、変な経験が邪魔をして見えなくなるモノが多いと思う」

 視線を外しながら、首を傾げた。

 全然、そんな気はしなかったけど、これって褒められているよね。

「言葉をぐだぐだ操って、色々と言ってくる批評家はいるけど、俺が一番怖いのは君みたいな人かな?」

「私……みたいな?」

「うん。好きなものは好き。嫌いなものは嫌いとハッキリ言うでしょう?」


 間違いなく言うかも。


「正直、恐ろしいよ~? こっちが10時間かけて作り上げたCMを、なんか気に入らない……の一言で終わらせてくれる奴とかさ~?」

「…………」

 それって……

「宇津木さんですか?」

「そうそう。宇津木」

 有野さんは笑って、指を振った。

「アレも半分くらいは感覚で生きてるな。まぁ、下手に専学に行かなかったおかげと言うか、技巧はなってないくせに印象的なデザインを持ってくるんだよね」

 宇津木さんのデザインか……

「私は好きですよ?」

「俺も嫌いじゃないさ。ただね──……」

 うーん、と唸って、有野さんは眉をしかめる。

「あいつが出したデザインは、素直に褒めてやるには、本人がふてぶてしい」

「ぷっ……!!」


 ふ、ふてぶてしいって。

 や。

 確かに可愛らしくもないね。

 間違いなく可愛らしくない。

「そこが可愛いとこでもあるんだが」

「可愛いですか?」

「うん。よく考えてみて? やることなすことそつなく順風満帆。そんな奴はムカつかない?」


 とてもムカつきます。
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