シャッターの向こう側。
「なかなか良いコンビじゃないか」

「それは……どうも」

「……で、結論は出たの?」

 はぁ!?

 有野さんは涼しげに微笑んで、小首を傾げた。

「俺、前にも聞いたよね? 誰が好きなのかって」


 誰に恋してるの?

 って、聞かれたアレですかね。

「恋してるように見えますか?」

「うーん。自覚してる様には見えない」

「今は……仕事が楽しくて」

「ふぅん?」

 そうこうしているうちに駅に着いた。

「あ。ありがとうございます」

「うん。じゃ、気をつけてね」

 有野さんが軽く手を上げ駅を離れると、定期券を出して改札を抜ける。


 ……恋か。

 本気の恋なんて、きっとここ数年していない。

 何となく付き合って、何となく別れてを繰り返し。

 だって、私には夢がある。

 ホームに立った瞬間、風が吹き抜けて思わず肩を竦めた。


 あれ?

 急に寒くなった?

 と、風が吹いてきた方向を見て瞬き。

「……あ」

 さっきまで、有野さんがいたから……

 うわぁ。

 なんて気配りさんなんだ。

 うん。

 これなら佐和子を安心して任せられるかも知れない。

 あの娘、恋愛はかなり臆病になってるし……


「…………」


 臆病……

 それは私も同じかも知れない。

 ホームに電車が入って来て、降りる人の波をやり過ごして乗り込む。
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