シャッターの向こう側。
 今まで自分から告白した事は余りないな。

 どの人も友達の延長みたいな付き合いが多い気がする。

 一回だけ、他の子が好きな男の子に告白をした事があるけれど……

 あれだって、フラれると解っていながら告白したようなもので。

 玉砕した後も、妙にスッキリしただけだった気がする。

 動き出した電車に揺られながら、ふと吊り革を見る。


 ……そっか。


 本気で好きな人に、自分から告白をしたことがないな。

 どの人も嫌いな訳じゃない。

 でも、好きでもなかった気がする。

 胸が痛くなるくらい、人を好きになったのはいつだろう。


 多分……お祖父ちゃんの言う通りに、高校生の時……

 見てるだけで終わった恋だった。

 あれ以来、好きになった人はいるんだろうか?


 きっといない。

 だって……

 もうあんな思いをするのは嫌だ。

 苦しくて、辛くて、悲しくて。

 好きになっても、好きになってくれる保証はなくて。

 どこかでブレーキを踏むようになっていて。

 好きになってくれた人なら、どこか安心出来て……


 狡いんだ。


 私はとても、狡い。


「…………」


 でも。

 何でこんな事を考えているんだろ。

 何故、考えているのかな。

 考えるのは得意じゃない。

 電車が降りる駅に着いて、人の流れに添ってゆっくりと降りる。

 風が冷たい。

 だけど、今の私には相応しい気がした。















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