シャッターの向こう側。
「雪ちゃんは……って、愚問かしらね」

 カメラバックを見て、婉然と微笑んだ。

「隆平の会社は土日休みだから仕事じゃないわよね?」

「はい。今回は別件です」

 冴子さんに微笑みながら、バックを見て首を傾げた。

「食料ですか?」

「ああ。コレ?」

 冴子さんがバックを掲げると中でガサリと音がする。

「梨。好きなの」

 ニッコリと笑って、隣に座った。

「私も好きだけど、ダーリンが大好きなのよ~。いくつでも食べれちゃう」

「あ……私も好きです」

 そうか~……

 もう梨が美味しいんだな。

「それで、何でそんな顔をしてるの?」

「へ?」

 驚いて顔を上げると、今度は天使の微笑みを見せる冴子さんが首を傾げた。

「何だか真剣よ~?」


 真剣ですし。


「時間がないんですよ」

「時間?」

「はい」

 何て言うか……

 今まではどちらかと言うか、仕事を疎かにしてきていたから自分の時間はとても集中出来ていた様に思える。

 だけど、最近は仕事に集中出来ていて、自分の時間が集中力散漫になっていると言うか。

「時間なんて、待っていても出来ないわよ? 忙しいなら尚更……捻り出さなきゃ」

「……解ってはいるんですけれど、心配事も解決して、スッキリとしたはずなんですけど」

 坂口さんの事がなくても、変わらない様な……

「ん~……私はアート関係には疎いから、何とも言えないんだけど。時間に追われてるの?」

「普通の仕事以外にも仕事してまして」

「仕事?」

「写真家さんとのコラボなんですけど」

 雑誌社の方からも掲載料が来てるから、一応は仕事だよね。

 そう呟いたら、冴子さんはパチクリと瞬きして私の手を取った。

「凄いじゃない! それって、独立したって事よね!?」

「え。ぇえ!? ま、まだまだですよ! ちょっとしたアルバイトみたいな?」

 独立なんて、まだまだ!

「え~……でも、似たようなものじゃないの?」


 全然!
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