シャッターの向こう側。
 ああ、んもぅ。

 カメラを取り換えて、フィルムを巻く。

 お祖父ちゃんの一眼レフ。


 ……絶対にこっちの方が落ち着く。


 ファインダーを覗いて、外界を遮断した。

 目の前に見えるのはきらびやかな湖面。

 輝く光は、私の眼には日光の黄色。


 ……だけど、写真になると光と影になる。


 青い空は薄灰色に、波立つ湖面は薄墨を刷いた濃淡に。


 陽光を反射する光の群は、白い輝きに……


 風は空気。

 流れは感覚。

 それをつかみ取った瞬間、シャッターを切る。


 ……うん。

 いい絵になりそう。

 思わず微笑んでカメラを下ろすと、背後から笑い声が聞こえてくる。


 顔をしかめて振り返った瞬間、目を丸くした。


「お前、そっちのカメラだといい顔するんだな」

「…………」

 電話は終わっていたらしい。

 宇津木さんは腕を組み、私から視線をずらすと湖面に目を細める。


 ……その横顔が、とても綺麗な笑顔だった。















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