シャッターの向こう側。
 いや~……

 でも、ココって高すぎるんじゃない?

 宇津木さん、奢っちゃう気でいる訳?

 そりゃランチとか居酒屋程度なら便乗しちゃうけどさ。


「余計な心配はいいぞ」

「うきゃぅ!」

 背後からイキナリ声かけないでよ!

「さっさと歩け」

「でも……」

「それとも、歩かされたいのか?」

「…………」

 ニヤリと笑う宇津木さんから、半歩だけ離れる。


 それってば、また襟首持たれて運ばれるって事だよね。

 それは嫌だ。

「本当に仲がいいんですね」

 今野兄が振り返りながらクスクスと笑って頷いている。

「俺の時は足蹴にしたくせに」

「お前。いくらなんでも女を足蹴に出来るかよ」

 え~?

「けっこう足が出て来てましたけど?」

 スッと冷たい視線が下りて来た。


 こ、これは……

 障らぬ宇津木に祟り無しだったのに!


「椅子とかだろうが?」

 ニッコリと爽やかにギュムギュム頬っぺたを抓られる。

「ひひゃひれふ~!」

「……お前って頬が柔らかいな? かなり伸びるぞ?」

「のみるろららくれ!」

 パシパシ宇津木さんの手を叩いても離してくれない。


 こんの男は……!!


「いちゃついてないで、早く行きましょうよ?」

 イキナリの爆弾発言に、宇津木さんと二人で今野兄を睨んだ。

「いちゃついてなんかいない!」

「ひょーれふよ! ろれのろこが!」

 今野兄はパチクリとして両手を上げた。


「いや。なんか面白いですが?」


 ……そうかも知れない!


 慌てて宇津木さんの手をもぎ取った。

「宇津木さんが変な事するから、変な事を言われるんですよ!」

「俺はいつも通りだ。単に……」

 宇津木さんは暗い空を見上げ、溜め息をついた。

「やっぱり、相手が女だと気を使うなぁ。今野」

 呟く様に言って、今野兄とお店に入って行った。
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