シャッターの向こう側。
 それは……

 確かにそうだと思う。

 フリーになる。

 聞こえはいいけど、それって〝独立〟すると言うことで。

 会社の一員と言う歯車から外れて、自らの足で立つと言うことで……

「それに俺も一応はフリー契約だし、けっこうは融通きくよ」

 今野兄の言葉に頷いた。

「完璧なフリーじゃなく、契約社員的な契約なんですか?」

「そう。最近じゃ賞もいくつか取れる様になったけどね。あの当時……イキナリ独立するのは無謀過ぎたし」

 今の私だって、とても無謀だと思う。

 だけど……


 そう思って、宇津木さんを見た。


 これって間違いなくお膳立てだよね。

 契約書によって、会社の一員の枠に少しだけ引っ掛かる。

 その上、同じ立場の先輩の助手と言う話も来たし。

 それは、とても安心出来る環境で勉強も同時に出来るけど……


 でも、それじゃ意味が無いような気もする。

 だってそれじゃ、宇津木さんに頼ってしまうのと同じ意味だもの。

「ピヨ」

「はい」

「あまり深読みするな」


 そう言われて視線をそらした。


 宇津木さんは……



 実はとっても優しいんだ。















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