シャッターの向こう側。
「私は、決して宇津木さんのじゃありませんから!!」

 瞬きしながら言うと、有野さんは楽しそうに首を傾げた。

「自覚ないねぇ。君は確かに宇津木の可愛がってるフォトグラファーじゃないか」

 呟いて、指を振った。

「実際、君の集中を途切れさせないように仕事をことごとく断るなんて暴挙にも出てるよ」


 は?


「まぁ、座ったら?」

 促されてとりあえず座る。

「とにかくアイツは今、とことん部外の仕事を全部断ってるんじゃないかな? 気づいてた?」


 ……確かに、最近は第一クリエーティブの仕事しか引き受けてない。

「神崎ちゃんて、結構グラフィックの方でもいじってくれるじゃない? それって結構楽なんだよね」

 苦笑する有野さんに、首を傾げる。

「楽でしょうね?」

「う、うん? 解っていてやってる訳?」

「私、信用してない人に画像をそのまま渡しません」

 面倒だろうが、手間になろうが、嫌なものは嫌。


 ……で、有野さんは何故、そんなに感心してるんだろう?


「成程。これは加倉井の言い分の方が的を得ているかもしれないな」

「はい?」


 佐和子が何か?


「加倉井が言ってたのは、神崎さんはいつも宇津木の話しかしないって話」

「そりゃ、一年も隣に居ればネタには尽きないですよ」

 有野さんは苦笑してから咳払いした。

「そうだね。尽きないだろうね。でも何でかな?」


 何でかな……って。


「……私、第一の仕事って実はまともにしてきた事が無いんですよね。最近は加納先輩とかも突発的に持ってきますけど」


 だいたい室長が持ってくる他部署の仕事ばっかりしてたから。


「だから、普段から接点が合ったのは宇津木さんくらいで」

「あ~……荒木さんとこは、変だから」


 オイ。

「でも、坂口と付き合ってた割に、話題が宇津木ばっかりってのも、かなり妙な話だよね?」


 って、言われても……

「もしかして、神崎さんがフリーになるのに悩んでるのって、宇津木と離れたくないから……とか?」


 ……え?


 宇津木さんと?


 私が離れたくない?



 って……
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