シャッターの向こう側。
「お前も、相変わらず言いたい放題だな」

 あは、あははは。

「笑ってごまかしか?」

 きゅぅう~……

 泣きたい。

 泣きたいですとも~。

「それで、こんな所でサボりだな?」

「や。聞かれましても答えに困っちゃいますから」

「困ったフリをしていても、実際問題そうだろうが」

 その通りでございます。

 宇津木さんはスマホを取り出し、何やら確認すると、ちらっと有野さんを見てから私を見下ろす。


「ピヨ。カメラは持ってるか?」

 へ?

「あ。はい。持ってますよ」

「それじゃこれが書類。歩きながら目を通せ」

 持っていたファイルを手渡されて、目を丸くする。

「は……ぇえ?」

「では失礼します」

 宇津木さんは有野さんに軽く頭を下げ、さっさと歩き出していた。


 ……って、ちょっと待てぃ。


 慌ててバックを持つと、有野さんに頭を下げて宇津木さんを追った。


「待ってくださいよ! 何ですか急に!」

「ああ。企画からまた至急で頼まれた」

「……はぁ。本当に企画っていつも後手にまわりますね」

 ぢゃなくて!

「写真がいるんですか?」

「ああ。それに書いてあるけど、星空が欲しいそうだ」

「星空~? じゃ、今持ってるレンズじゃ無理ですよぅ。一回マンションに帰らないと……」

「あ~……。じゃ、車手配してるから、それを借りてからお前のとこに寄るか」

「車も用意してあるんですか?」

「当たり前。都市部じゃ星空を望むのは難しい」


 あ~……

 だよね。

 ネオンがうるさくて、晴れた状態でも星空なんて難しい。

「じゃ、俺の車貸そうか?」

 言われて、二人で同時に振り返った。

「……有野さん。仕事は?」

 宇津木さんの冷たい声に、有野さんは男性にしては可愛いらしい笑顔を見せた。


「え? 今、遅い昼休憩?」

「もう15時半ですから。どちらかと言うと遅すぎます」

「俺に餓死しろと……!?」

「遠慮なく食って来て下さい」

「車は? いいの?」

「返しに行くのが面倒ですから」

 そんなやり取りの後、以前にも借りたレンタカーを借りて出発した。
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