シャッターの向こう側。

木馬……もしくは驚愕

******





 出来上がった写真を眺め、隣で頭を抱えている宇津木さんを見た。

「あのな。ピヨ」

「はい。宇津木さん」

「誰も俺のダラダラショットを撮れとは言ってないんだが」

 えっと……

 まぁ……ぅう~ん?


 手元の写真を見て、視線を外した。

 星空の写真がない訳じゃない。

 ないわけじゃあないけど……

 宇津木さんが写ってるのも結構多い。


「これなんて良くないです? 葉の落ちた木に宇津木さんの後ろ姿」

 ちょうど日が沈む寸前で、かなーり綺麗な夕焼けを背景に、宇津木さんと木はシルエットになっていたりする。


 カラスでも飛んでいたら、もっと良かったかもしれないね☆


「馬鹿。俺が使いたいのは星空であって、俺の写真じゃない」

「あ。じゃ、コレもらっちゃいます。秋って感じですもん」

「……まさか、これを荒城氏とのコラボに使う訳じゃあるまいな?」

「駄目ですか?」

 ひょいとその写真を抜き取って、椅子の背もたれに身を任す。

「だって、最近一番の改心の出来なんですもん」

 ちらっと写真から視線を上げ、不機嫌そうな宇津木さんを見た。

「駄目ですか?」

「……お前なぁ」

 宇津木さんはしみじみ呟いて、ガックリと肩を落とす。


「……好きにしろ」


 やったぁ!


 これで雑誌社の問題もクリアした!


「後で肖像権が……なんて言わないで下さいよ? 私、払いませんからね」

「言うかよ。だいたい、その写真じゃただの黒い人影じゃないか」


 確かに~。


「あ。でも星空も綺麗に撮れてるでしょ? まぁ、あの時みたいに、星が降ってくる様な感覚までは撮れませんでしたけど」


 あの時、最終的には宇津木さんのナビでただっ広い平野に車を停めた。

 民家も全くなく、邪魔をする高い木もほとんどなかった公園。

 360度フル回転で空が見渡せて、瞬く様な星たちが降ってきそうな感覚に陥った。


「本当に綺麗でしたねぇ」


 呟くと、何故かぼんやりとした視線が返って来る。
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