シャッターの向こう側。
「……何かいいたげですね」

「ああ……」

 宇津木さんは視線を写真に戻し、自分の写っているモノを返してきた。


「案外、メルヘンなんだな」

「…………」


 悪い?

 てか、星が綺麗と言ったらメルヘンなのか?

 その基準は一体どこにある!

 宇津木さんて変!


「今、自分を正当化しなかったか?」


 ……顔も上げずに何故解るの。


「宇津木さんて、よく解らない図星をツイて来ますよね」

「たまにお前は解りやすいから」

「そ、そうですかねぇ?」

 首を傾げた瞬間、持っていた写真を後ろから取り上げられた。


「きゃ……っ」

「こんちは、神崎さん」

 パッと見上げると、今野兄。


 せめて、声をかけてから取り上げて欲しかったかも。

「こんにちは。今日はお仕事ですか?」

「そう。加納さんがまた無理を通して来たから、その尻拭い」

「尻拭い?」


 今野兄は写真をめくりながら頷いた。

「まぁたフードコーディネーターのいない広告の手伝い」

「それはいつもの事じゃないですか」

 ちらっと今野兄と目が合う。

「俺がいない間、神崎さんが尻拭いしてたんだ。大変だったでしょ?」

「邪魔されなくて楽でしたよ」

「……邪魔?」


 また目が合った時、宇津木さんが鼻で笑うのが聞こえた。

「ピヨはフードコーディネーターが邪魔なんだろう。自由に撮りたがるから」

「だって、この角度から撮れだの、もっと明るく写せだの、人のする事に注文多いんですもん」

「それは仕方ない。お前、まだ新人扱いされてたから」

 そう言って、宇津木さんはパソコンに向き直る。


「神崎さんて器用貧乏だね」

 今野兄は空いているデスクに腰をかけ、写真を返してくれた。


「器用貧乏?」

「フードコーディネーターの役割もしちゃった訳でしょ? 何件か見たけど、ちゃんと美味しそうに撮れてたよ」


 あら……

「ありがとうございます」

「それで、デートは楽しかった?」


 はい?
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