シャッターの向こう側。
「びっくりした?」

 カメラから顔を上げ、ニッコリと笑う今野さんを眺めた。

 ……仮装パーティー?

「……びっくりしてるねぇ」

 そりゃするってさ。

「ま~。あの会社って変なことするよ。俺が入社当時は雪中雪合戦だったし」

 うわぁ……

「絶対嫌だ」

「結構面白かったよ」


 ……面白かったですか。


「……で、行くの?」

「さぁ……そんな話は初耳ですし」

「そうだろうね」

 今野さんはライトを消し、鉢植えの水を軽く払うと籠に入れて振り返った。

「悪いけどアルバイトさん」

「はい」

 アルバイトさんです。

「これ持って宇津木さんとこ、返しに行ってもらえる?」


 ……え?

 見た目より全然重い籠を持ち、目を細めた。


「よろしく」


 ……私のまわりはサドが多い?

「あー……」

「よろしくね?」

 笑顔の念押しに、

「……解りました」

 頷くしかなかった。





 今野さんも何気なく意地が悪い。

 籠を抱えて会社を見上げ、溜め息をついた。

 確かに、契約社員になって一週間経ってからすぐ。

 私は宇津木さんの仕事を受なくなった。


 ……だって冴子さんからの電話が多い。


 それに宇津木さんとばかり組んでたら、離れる意味がないように思うし。

 坂口さんとは畑違いだし、部も違うからそんなに気にならなかったけど。


 夢を追う!

 と決めた時点で、他の事に迷わない様に離れた訳だし……


 気付かなければ良かった……


 なんて思わないけど、冴子さんと話している宇津木さんにイライラしてる自分も嫌で。

 仕事に集中しようとすればするだけ意識してしまっ……


「…………」


 支離滅裂かも。

 でも、何となく今のままじゃイケないって気がしていた。
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