シャッターの向こう側。
「ホントにやるんですね~」

 封筒を受け取って眺めていると、宇津木さんは何故か難しい顔をした。

「こういうのは会長の思い付きだ」

 宇津木さんのおじいさん?

「数年に一度は必ず変な事をさせる」

 必ず?

 てか、孫にそこまで言われる会長って。

「す、数年に一度でよかったですね」

「まったくだ」


 でも、仮装パーティーか。


 パラッと封筒の中身をみて、思わず眉を寄せる。


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日時

 12/20 20:00~

服装

 普段着・スーツ厳禁
 壊れモノ厳禁
 割れモノ厳禁

会費 社員無料

会場

 ホテル・アルファート331

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「壊れモノ、割れモノ……?」

「昔やった時に、紙で作った張りぼてとかガラスの王冠を被ってきた人がいて、それが壊れたらしい」


 それは……

 想像してみると、とても面白いかも?


「宇津木さんはどんな格好するんです?」

「…………」


 あの。

 ……思い切り嫌な顔をされても。

「自分で選んだ仮装ですよね?」

「まぁな」

「教えてくれてもいいじゃないですか」

「……パイロット」

「…………」


 こ……


「コスプレ……!!」

「そんな事を言ったら、皆コスプレだ!」

「ひょんらにはるらしかららくれも!」

 頬っぺたをつままれて、あたふたと腕を掴む。


 宇津木さんはいつも通りの宇津木さんで……

 拍子抜けと言うか、なんて言うか。


「お前は何にするんだ?」

「そんなもん、今日聞いたばかりで決められるはずがないじゃないですか」

「……それもそうだな」

 そんな感じで食事も終わり、例の如く宇津木さんに奢ってもらって店を出る。

「ごちそうさまです」

「ま、誘ったのは俺だしな」

「そうですね」


 ゴツンとげんこつをもらった。


 い、今、星が飛んだよ!?


「暴力反対!」

「考えてからものを言えな?」

 はい。

 お祖父ちゃんにも、よく言われてます。
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