シャッターの向こう側。
「シンプルなリングなんだね」

 言った瞬間、目の前の二人にガッカリされた。

「神崎さんらしいね」

「おめでとうとか言わないかしら……」

 あ。

「おめでとうございます、有野さん」

「雪! 私はどうなのよ!」

「え~……だって頑張ったの有野さんの方でしょう?」

「そうだけど! そうなんだけれど!!」

「じゃ、それでいいじゃん」

 そう言うと、有野さんは笑っていた。


 でも……いいな。

 結婚するんだ。

 佐和子は〝もう二度と男なんか……〟なんてタイプになってたけど。

 うん。

 よかった。


「おめでとう」

「……ありがとう」

 佐和子からは嬉しそうな、困った様な笑顔が返ってきて、ベールを少し引っ張られる。


「ん?」


「雪は……?」


 私?


 私は……


「その予定はないよ?」

「予定は聞いてないわよ! どうなのかって聞いてるんじゃない」

「どう……って。何が?」

「宇津木さんとよ」


 はい?


 ポカンとすると、有野さんもビックリした様に佐和子を見た。


「俺、何も言ってないよ?」

 私だって、佐和子に何も言ってないよ。

 確かに佐和子は前に〝てっきり宇津木さんとどうにかなると思ってた〟とかって言われた事がある。


 ……全面否定した記憶もある。


 有野さんに言われた時だって思いっ切り否定したし、どこからそんな意見が導き出されるんだい!?


「坂口さんと別れたんでしょう?」

「え……いや。うん。そうだけど」

「宇津木さんが好きだから別れたんでしょう?」

「…………」

 実は違うんだけど。

 佐和子は佐和子なりの見解で、私が宇津木さんを好きだと思ったの?


「……や、ちょっと違うと思ったから、別れた訳なんだけども」

「そうでしょう? だいたい、初めからあんたの反応おかしかったもの」


 私の反応?


 ……で、ございますか?
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