シャッターの向こう側。
『明日。迎えに行く』

「はい?」

 聞き間違い?

『だから、明日迎えに行く』

「…………」


 来られても困るけどー!!!

 だってホラ、あんな事を言われた後じゃ顔も合わせずらいし。

 と言うか、合わせたくないし。

 そりゃ宇津木さんは最初から最後まで私に気付かなかったみたいだけど。


 言われた本人はバッチリ気付いていた訳で……


「嫌です!」

『何がだよ』


 何がって。


「お出迎えなんて嫌です!」

『お出迎えじゃなくて、迎えに行くって言ってるだろうが』

「軽い言い間違いはこの際ですから無視して下さい」

『無視したら意味が不明になるだろう』

 そんな正論もこの際いいですからっ!

『それにな、ピヨ。今から郵送で送るとしても2日はかかる。その間また、誰に迷惑かけて生活するんだ』

「…………」

『しかも明日くらいの便なら空席見つけられるが、それ以降となるともっと難しい』


 あぅ。


『その間、そこで生活するつもりか?』

 ぅうう……。

『どうなんだ?』

「……宜しくお願いします」

『解ればいい』

 このヤロウだわ。

「でも旅費がかさみます。会社に届けが間に合わないし許可も下りないんじゃ?」

『そこらへんは心配するな』


 心配しますけど。

 だって、空港券なんて安いわけじゃないし。

『とりあえず予約を入れた』

「予約って……」


 はやっ!!


『ネットで予約すれば早い』

「いくらなんでも早過ぎでしょう」

『とにかく』

「はい!」

『明日の14時にはそっちに行けると思う』


 それこそ早いっ!!


「え。困りますっ」

『今度はなんだ?』

「まだ写真撮れてない!」

『撮っただろうが。結構面白いのが……』

「そうじゃなくて。そっちじゃなくて」


 荒城さんとの方が……っ!!


『ピヨ』

「はい」

『頑張れ』


 そう言って通話が切れた。
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