シャッターの向こう側。
「……ふ」

 ふざけるなぁ!

 頑張れって言ったって、出来る事と出来ない事がある!

 だいたい風景を題材にすると天候にかなり左右されるし。

 風や日光、雪の降り方なんかはとくにややこしいんだからっ!


「…………」


 なんで私はこんな人を好きなんだろう。

 そりゃ~とても無茶苦茶言うのはなんとなく気付いてましたとも。

 気付いてたし、知っていたけど。


 ウキ─────!!!


 頭を抱えると、おばさんのクスクス笑いが聞こえてきた。


「雪ちゃん」

「はい」

「今日はお暇をあげるわ。昼食が終わったら明日の朝食だけ手伝ってちょうだい」


 え……


「それは駄目ですよ!」

「その代わり、バイト代から引くけど」


 ん?


「ここから空港に行くまで直行バスがあるから、だいたい1300円でしょう? ここからあっちまでの空港券が2万しないから」

 おばさんはテキパキと計算しながら、大きく頷いた。


「うちで雪ちゃんが働いたのは一昨日の夕方からだから……うん。たぶん2万円ちょっとくらいは出せる!」

「それはどういう計算ですかっ」

「あら。うちはスキー場に近いペンションだもの。実は12時間勤務なんだから、残業費用と考えても相場よ」

 一時間千円としても、おかしいような気がする……


「それに、決まってたバイトの子が急に来れなくなってたし、とても助かったから」

「あ。そうなんですか?」

「そうそう。だから気にせず専念してもいいわよ~」


 本当に?


「……雪ちゃん」

「はい」

「疑り深いわよ?」

「ぇえ!?」

「解りやすい表情するわよね~」


 おばさんはケラケラ笑いながら、人参の皮を剥き出す。


「……ポテトサラダですか?」

「ピンポ~ン」

「私、得意です」

 キョトンとおばさんが顔を上げる。

「雪ちゃんが?」

「それはどういう意味ですかっ!!」


 もちろん、おばさんはケラケラとまた笑った。

 それでも作ったポテトサラダは、雪ちゃん特製ポテトサラダと名前がついて、お昼に結構好評だったらしい。
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