シャッターの向こう側。
「それで……」

「うちなんか、写真撮ってもしょうもないべさ」

 おじいちゃんはドッカリと座り込んで、ニカニカと笑う。

「そんな事ないです。とても面白いです」

「まぁ、都会の人なら面白いかもしんねぇけどな」

 ……あ、こっちの人なら当たり前なのかな?

「いつ潰れるか分かんねぇ家、撮ってもしゃーないべ」

「潰れるんですか!?」


 マジですか!?


「俺が生まれる前からあっからな」


 おじいちゃん……いくつなんだろう。

 うちのお祖父ちゃんより年上かなぁ。

 でもうちのお祖父ちゃん、ある意味年齢不詳だし。


 うーん。


 上かなぁ……

 いやいや、下かも知れないなぁ……


「恥ずかしいべ」

 あ。

 かなり凝視しちゃいましたか。

「すみません」

「いいよ、いいよ。好きなだけ撮れば」

「え。おじいさんを!?」

「家の話しじゃないのかい!?」


 あ、そうか。


「またまたすみません」

「あんた妙な人だねぇ」

 豪快にケラケラ笑うおじいちゃんに頭を下げた。


「もしかしたら、雑誌に載るかも知れませんが」

「そりゃ~いい冥土の土産になるな」

「や。それは……」


 駄目でしょう……


 とにかく家の外に出て写真を撮らせてもらってから、おじいちゃんに名前を聞いて、また散策に向かった。



 ここの人達にとっては日常でも、こうして見ると、非日常の世界。

 私の実家もこんな大量な雪とは縁遠いからなぁ。


 雪は純白って言うけど、日光に照らし出されたそれは、太陽を写したオフホワイトだったり、空を写した淡い青だったり。

 色んな色に見えるから不思議。


 気がつけば雪深い木立に立って、背後から吹き付ける風に身を竦めた。


「…………」


 振り返ってみると、そこに葉の落ち切った木々が凜として点在する。


 そして……


 誰もいない空間はどこか寂しい……


 寂しくて、苦しい。
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