シャッターの向こう側。
「あ……っ」

 廊下を曲がった所で、エレベーターの扉が閉まるのが見えた。


 ……乗り損なった~。


 乗り損なったら、たまに来るのが遅いんだよね。

 得にこんな時間帯に、上の階に行くやつは……

「ま、いっか」

 最近は撮影だのなんだのと結構体力もついてきたし、階段で行っちゃおう。

 非常扉を開けて、重い鉄扉をそっと閉める。

 と……


「あれ。久しぶりだね」

「うわきゃぁ!」


 ガンッ☆と目の前の扉に頭をぶつける。


 いつもの事ながら、間違いなく星が飛んだ。

 飛んだよ~☆


「……大丈夫?」

 振り返ってみると、有野さんが心配そうな顔をしていた。


「お、脅かさないで下さいよっ! 何でそんな踊り場から声かけるんですかっ」

「脅かしたつもりはないんだけど……」

 ポリポリと頭をかいて、有野さんは階段を下りてくる。


 本当ですか?

 本当に本当ですか!?

「案外、神崎さんて怖がりなんだね」

「悪いですかっ!?」

「いや、悪くない悪くない。でも久しぶりだね? 第一に届け物?」

「あ、はい。今帰る所で……」

「宇津木にいた?」

「居ましたよ」

「ふぅん……」


 ……何ですかね。

 何でそんな眉を潜めてるんですかね。


「皆でご飯食べに行こうか?」

「嫌です」

「何かあった?」


 はい!?


「何ですか! 何を根拠の発言ですか!」

「顔……笑ってないよ?」


 ふひっ!?


 か、顔!?


「笑ってるんだろうけど笑ってないよ。加倉井は気付かないだろうね」


 何故ここに佐和子が出て……


 じゃなく!


「つ、疲れてるんです! 今さっき四国から帰って来たばかりですし」

「じゃ、エレベーター使えばいいんじゃないの?」

「だって来るのが遅いし……」

「宇津木と何があったの?」

「何も有りませんよ!」

「ははぁ……何もないのが不満なの?」


 言われてギョッとした。
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