シャッターの向こう側。
 どこからそんな論理が出て来たの!?

 どこからそんな推測が成り立つの!?

 何も言ってないし、ここで会って数分も経ってないよ!?


 でも有野さんは腕を組みながら、何故か得意そうに笑った。

「僕ね、宇津木の先輩なの」

「は、はぁ……」

 知ってますが。


「あの解りにくい男を、見てた人間でもあるの」

「はぁ……」

 何が言いたいんでしょうか?


「アレに比べると君はわかりやすい」


 わ……


 そりゃ解りやすいでしょうよ!

 だからって、なんで色々聞かれなきゃ……もとい、言われなきゃいけないの!

「有野さんは関係ないと思います!」

「うん。関係は……そうだな、未来の奥さんの友人だからってとこで手を打たないかな?」

「打ちません!」

「仕方ないな。じゃ、君のおかげで奥さんになる了承得たから、その御礼にって事でどうかな?」

「訳わかんな……」


 ん?


「私のおかげ?」

「そう。加倉井はやっぱり俺の事を軽い人間だと思ってたみたいだし」

「うーん……」


 有野さんて、よく解んないけど……


「スルメみたいな人ですよね」

「……何それ」

「噛めば噛むほど味があるって言うか?」

「一応、褒め言葉として受け取っておこうかな?」


 苦笑されたので、同じく苦笑で返す。


「……別に良いですよ」

「ん?」

「私、どうこうしよう……なんて思いませんし」

 有野さんは眉を上げて、黙って私を見下ろした。

「だいたい彼女さんいる人って、何かと面倒だし」

「え? あいつに彼女いたの?」


 いますよ。

 すこぶる綺麗なお姉様が。

 ふっと目をそらすと、階段の照明がチカッと瞬いた。


 それに……


「私は〝弟みたい〟なもんなんですって」

「……え?」

 ビックリしたような、有野さんの声。

「本人が、そう言ってましたし」


 肩を竦めて有野さんを見上げると、何とも言えない顔で難しい顔をしてる。
< 319 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop