シャッターの向こう側。
「それって直に言われたの?」

「え? いや……」

 直接ってわけじゃないけど。

「それなら、宇津木を絞めとかなきゃならないけど」

 って、何を真剣に怖いこと言ってんですか!?

「女の子にそんな事を言っちゃいけないでしょう」

「し、紳士ですね」

「そんな事は全然思ってないでしょう」

 バレバレですか。


「と、とにかく、絞めとか無しで。別に直接って訳じゃありませんでしたし……」

 少なくても、坂口さんとの会話の中での話だし……


 俯くと、頭上から溜め息が聞こえた。


「何……坂口とでも話してた?」

「…………」


 ……ってか。

 有野さんて怖い。

 とことん怖いよ!?

 何でそうポンポンと図星をピッタリ言い当てるのさっ!

 どういう人なのさ、どんなエスパーなのさっ!?


「宇津木が君の話をする相手なんてかなり限られてるでしょう。だいたいアイツは友達が少ないから」

 何だかとっても悲しい事をズケズケおっしゃっておられますがっ!

「アイツも友達を選べばいいのに、ややこしい」

 溜め息混じりの声にちらっと視線を上げると、困った様な笑顔が返って来た。


「あのね?」

「はい」

「……男の友情って結構複雑なんだよ? 坂口は宇津木をやっかんでるとこがあるし」

「…………」

 それは、何となく本人が言ってたかも知れません。

「……何だか本気でややこしい事になっちゃってるね」


 そうでもないと……


 どっちにしても……


「いいんです。私、そんなに器用じゃないし」

「うん?」

「私、今はプロになる事だけ考えたいと思ってますし」


 呟いたら、頭に手を乗せられた。


「諦める訳?」

「努力中です」

 だから、あまり蒸し返さないで欲しい。


「諦め切れる感じ?」


 そんなの解んない。


 聞かれたって……


 解るはずがない。


 だけど、このまま行くしかないもの。
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