シャッターの向こう側。
「……ピヨ」

「はい?」

「あっさり、こってりどっちがいい?」

「あっさりですね」

「肉と魚とどっちがいい?」

「お魚です」


 だから何?


 宇津木さんがメニュー表を取り上げて、有野さんに渡した。

「……よろしくお願いします」

「……あの」

 思わず睨むと、宇津木さんの静かな視線が返ってきた。

「3分で決める自信あるか?」


 うふふふ☆


「おいしいのがいいです☆」

 ニッコリと微笑むと、有野さんが吹き出した。

「わ、解った。あっさり魚料理で美味しいのだね?」

 そう言って、有野さんは店員さんに三人分の注文してくれる。


 まぁ、お店に慣れてる人に頼むのが1番無難だもんね。


「神崎さんて、いつもこんななの?」

 不思議そうに首を傾げられ、私も首を傾げる。

「こんな……?」

「自分で決めないの?」

「酒の魚は決められます」

「食べたいものとかはないの?」

「たまにあります」

 有野さんはア然として、何故か宇津木さんを見た。

「お前がいつも決めてた?」

「バイキングなら自分で選んでました」

 そりゃ……

「目の前にあれば選びますよ」

「目の前にあっても社食じゃかなり悩むくせに」

「宇津木さんは悩みませんか?」

「肉か魚しかないのに、何で悩む」

「だって小鉢のおかずも違うじゃないですか」

「……そんなもの、どうだっていいだろうが」

「いいわけがないじゃないですか!」

「それで食堂が終わる時間まで悩むヤツもいないと思う」

「な、何故知ってるんですか!?」

「マジかよ……」

 呆れた様な宇津木さん。

 有野さんは声もなくお腹を抱えて笑ってた。



 笑いすぎだから。



 思っていたら、

「所で加倉井さんはいいんですか?」

 宇津木さんが急に話題を変えた。

「うん。グラフィックスチーフに頼まれた仕事で残業」

 有野さんは可愛い笑顔で言って、それから固まる。

「あれ……俺、お前に言った?」


 え。隠し事だったの?
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