シャッターの向こう側。
「わ、私にですか?」

 本当に?

『そう。最後の〝四季〟を見た人からの依頼なんだけど、君の写真を使いたいって人が居てね』

「冬のヤツですか?」

『そう。アレ……あの地上から見上げる形の空をね、使いたいって。本の表紙なんだけどね』


 ああ……あの写真。

「一度雑誌に掲載されたモノですよね? そういうのも私の仕事になるんですか?」

『……神崎さん。契約事項をあまり読んでないね?』

 う……

『一応、ああいう写真雑誌の写真は、権利を売るか放棄しない限り最終的に撮った写真家に権利が発生するんだよ』

 へぇ。

『覚えておくといいよ。雑誌によっては権利が雑誌社に帰属するところもあるから』

「色々なんですね」

『そう。例えば君の所の……あの会社は会社に権利があるけどね。社外持ち出し禁止になってるでしょう?』


 うう……

 その通りです。

 会社に2年も勤めていて、そんな事も知りませんでした。

『でね。雑誌社に問い合わせが行ったみたいなんだけど、前回は僕が頼んだ形だから連絡先があやふやで。会社の方に問い合わせても君の連絡先を教えてくれなかったらしくてね』

「あら……」

『まぁ、最近は法律もうるさいから。で、その作家さん、僕の知り合いでもあるから間に入れさせてもらってる訳』

「あらら……」

 有名写真家さんに、間に入って頂けるだなんて……

『で、暇?』

「はい。今なら」

 すぐに答えたら、携帯の向こうからクスクス笑いが聞こえた。

『いや。さすがに今日は無理だけれど……細かい話は電話じゃなんだし、スケジュールを教えて』

 そう言われて、大まかなスケジュールを教え、後日その作家さんと話し合いをすることになった。


「…………」

 ぼんやりと切れたスマホを眺める。


 ……てか、夢じゃないよね?

 私に〝仕事〟がきたんだよね?


 う……


 うきゃ~~☆


 大変!

 嬉しい!

 嬉し過ぎる!


 どうしよう!

 いや、どうしようって言うか。


 ええっと……
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