シャッターの向こう側。
 私にだってプライドはあるし。

 結局、宇津木さんとは仕事上でずっとお付き合いしていかないといけない訳で。

 個人的な感情を持ち込んで、めちゃくちゃになっちゃうのが目に見えてるなら……

 我慢すればいいだけだもん。

 私と宇津木さん。

 几帳面で、どちらかと言うと仕事に真面目な宇津木さん。

 見ているものはとても似てるけど、共通点なんてそれくらい。


 だいたい、性格的にも違うじゃんか。

 うん。

 全然違う。

 違うって……


 ……そう思って逃げようとしてるのはよく解ってる。

 でも、そうするしかないじゃんか。

 どこかで、何かで線引きしないと、全てが無くなっちゃいそうで……


 それは嫌。


 それが嫌。

 どうしてもどうにもならないなら、せめて〝繋がり〟くらいはあってほしい。

 どうしてもどうにも出来ないなら、せめて〝繋がり〟だけは残したい。

 私もそんなに大人じゃないから、すぐに割り切るなんて芸当は出来ないし。

 すぐに普通でいれるはずもない。



 だから時間が欲しいのに……




「お前! ちょっと待て!」


 何故、追ってくる!


「帰るって言ってるんだから、放って置いてください!」

 振り返ると、かなり後方にコートを着ながら歩いてくる宇津木さん。

「酔っ払いを放っておけるか馬鹿!」

 叫びながらついてくるから、急ぎ足で歩きだす。

「グラスの2・3杯で酔いません!」

「お前は女だろうが!」

「…………」


 こんな時だけ女扱いしないでよ!


 何なの!?


 なんでなの!?


「神崎!」

「なんですか!?」

「そこでStop!」

「嫌ですから!」

「それ以上行くと、もっと嫌な事になる」



 ん?



「もっと嫌な事?」

「その道を行くと、右側に公園があって」


 公園?


「夜中にひとりでにブランコがな……」


 ブ、ブランコが何?


「勝手に動くと……」

「怪談はいやぁ───!!!」
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