シャッターの向こう側。

真実……もしくは事実

******





 まず血の気が引いて、それから一気に身体中が熱くなる。


 何を突然言ってくるの。


 何を突然聞いてくるの。


 なんで聞いてくる。


 そんな事。


 そんな事は……


 それは……



「宇津木さんには関係ないじゃないか!!」


 思いきり突き飛ばしたら、お互いに2・3歩離れて向き合った。


「あのな、神崎」

「なんですかっ!」

「お前が俺を好きなら、俺に関係ないとは言えないだろう?」

「関係なんてないじゃないかっ! 私は告白するつもりも何も一切合切ないし!!」

「なんで?」

「なんでって、決まってるじゃない!」

「何が?」


 この涼しげで、余裕しゃくしゃくな顔は何!?


「宇津木さん私を弟みたいって言った!」


 微かに眉が跳ね上がり、宇津木さんは腕を組む。


「それから?」


 それから?


「私の事、人間扱いしてくれないじゃないか!!」

「冗談だろうが」

 あれが冗談なら、本気で宇津木さんの冗談は冗談に聞こえない。


「それに、宇津木さんは冴子さんと付き合ってるんじゃないか!」

「は?」

「私、あんな綺麗な人と張り合うつもりないし!」

「ちょ……っ」

「そりゃ少し怖いけど、冴子さんていい人だし。私はあんなに大人じゃないし。女らしくもないし!」

「ちょっと待て」

「待たない! だから──……」

「ちょっと待てって言ってるだろうが!」


 宇津木さんの怒鳴り声に、身体中でビクッとなった。


 なんか知らないけど、すごい怖い。


「黙って聞いてれば本気で好き放題だな、お前」

「黙って聞いてないじゃんか」

 ちょっと自覚はあるのか、少しだけ眉を潜める。

「……ともかく、何を勝手に変な妄想してるんだお前は」


 変な妄想って……


「……だって宇津木さん、冴子さんと仲いいし」

「ああ。悪くはないな」

「恋人ですかって聞いたような……?」

「お前から聞かれた記憶はない」


 冷たい視線が返って来て、冷たい汗が背中を流れた。
< 338 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop