シャッターの向こう側。
 好きだと気付く前から好きだった。


 無意識に求めてるって気付かなかった。


 好きだと……

 いつの間にかそう思っていて。

 反発していても好きで。

 言い合っていても、それが楽しくて。

 どうしようもなく好きで。


 どうすればいいか……解らなくて。


「………っく」


「泣くのはずるい」


 泣かせるのもずるい!

 キッと振り返ると、困ったような微かな笑顔が目に映った。


「宇津木さん」


「なんだよ」


「宇津木さんは私が好きなの?」


「だったら悪いか」


「…………」



 あ……


 あっさり答えた。

 あっさり答え過ぎじゃないか?

 本気か!?

 本気なのか!?


 夢か!?


 幻か!?


 それとも冗談か?


「だって、宇津木さんの冗談は冗談に聞こえない……」


「馬鹿かお前は」

 呆れた声にカチンとくる。

「馬鹿じゃない! だいたい宇津木さんが、どうして私を好きになるのかが全然解んない!」

「俺にも解らない。だいたいって言うならお前も悪い」

「この期に及んで私のせいにするっ!?」

「する。夜遅くに男の部屋に乱入しに来たり、何かあるとすぐに相談して来たり。お前は何も考えて無かったのかも知れないが俺は困った」


 ……困ったの?


「本気で何も考えてないのか、それともそういうつもりで来てるのか、お前の行動はやんちゃ過ぎて判断出来なかった」


 ……そう言われても困る。

 だってその頃なんて、私ですら〝好き〟って気持ちに気付いてやしなかった。


「だが……」


 だが……?


「手を離したくはないとは思ってた」

 どことなく自嘲気味な笑いに、首を傾げる。

「手を掴んでた事なんてありましたか?」

「そういう意味じゃない」


 呆れられた。
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