シャッターの向こう側。
 何がなんだか解らない。

 解らないけど、まわりにはお姉様達が集まって来ていて。


 賑やかなのは好きだ。


 好きだけど、


 賑やか過ぎないか?


「……驚いたか?」


 耳元の声に、ちらっと宇津木さんを見上げる。


「とても」


「面白いって顔してるな?」


「とても」


「ちょっと、そこの二人! 見つめ合ってないでカメラを見てよ」


 着物姿のお姉様の声に、皆が爆笑する。


 てか、すごく恥ずかしいんだけど!!


「もう~。またいい男が一人メスに取られたわ~」

「やっぱり純正には敵わないわよ」

「そこ騒がない! 撮るわよ~!!」


 喧騒の中、宇津木さんの腕が肩にまわってきて引き寄せられる。


「俺が好きだろう?」


 騒がしい中でも、その声は何故かよく聞こえて──……


「……とても」


 そう答えた瞬間、




 唇が重なりあった──……




「あら。変なもの撮っちゃったわね」

 着物のお姉様の声が聞こえたけど、そんなのはどうでもよくて。


 まわりのお姉様達が口笛を吹く中、瞬きを繰り返していて……


「雪ちゃん。大変みたいね」


 冴子さんの冷静な声が聞こえた時、柔らかい舌の先が下唇を掠めていった。


 宇津木さんの涼しい笑顔が視界にあって……


「な、なんて事をするんですかっ!!」


 私の必死の叫びは、お姉様達の爆笑に消されて行った──……















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