シャッターの向こう側。
 そしてマンションの部屋に着くなり、宇津木さんは何とも言えない微妙な顔をする。

「お前。掃除くらいすれば?」

「片付けも出来ない人みたいに言わないでくれませんかっ!?」

「……整理整頓出来てる様にも見えないがな」

 その視線が、リビングの片隅に積み上げられた段ボールに向かった。


 まぁ……確かに後回しにしたかも知れない。


「アルバムかファイルを買ってから、と思ってるんです」

「写真?」

「ですけど」

 かなり前に〝仕分け〟と称して、引っ張り出してきたまんま。

 宇津木さんはキッチンに買い物した袋を置くと、考え深そうに段ボールを見てる。

 もしかして……見たいとか?

「見てみます?」

「いいのか?」

「雑なの多いですよ~。学生時代のもありますし、ボツにしたのもあるし」

「夕飯。少し遅くなってもいいか?」

「問題ないです」

 とりあえずソファーの所まで段ボールを持って行く宇津木さんを眺め、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出した。

「お前よくこれだけ集めたな」

「集めた訳じゃないんですけど……」

 専学時代の課題現像とか、何となく撮ったモノとか、フォトコンに出さなかったモノとか……

 いっぱいになると、段ボール一つにまとめてしまい込んでいただけ……と言うか。


 まぁ……いろいろあったし。

 うん。

 私悪くない!


「今、自分を正当化したろ」

 ……何故解る。

「お茶飲みますかぁ?」

「また話題を変えたな」

「さっきから、いちいち言いますね」

「言わないと勘違いするだろうが」

「いや。いくらなんでも今のは勘違いしないですから……」

 お茶を注いだグラスを目の前のテーブルに置きに行くと、ニヤッとされた。

「見るか?」

「へ?」

 写真から視線が上がって来て、手招きされる。

 ……そんな面白いもの撮ったかな。

 と、覗き込んだら。

「わきゃ……っ」

「これでいい」

 なんて、涼しい顔で写真に視線を戻す宇津木さんだけど。

 何故か、私は宇津木さんの膝に座っていて。
< 354 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop