シャッターの向こう側。
 でもあれよね。

 多分、考えた時期はあったと思うんだ。

 私だって考える事もあるんだし。

 何時だったか、なんて覚えてはいないんだけど、何となく記憶にあるのは──……


「高校の時のお前って、かなり素直?」

「は?」

「今より素直だろ」

「突然なんですか?」

 宇津木さんは、めくっていたウチの一枚を目の前にかざしてくる。

 それは、学祭の時のスナップ写真で──……


 数人の友達。

 ピースをするその中……

 高校時代に、好きだった男の子が写って居るものだった。

「…………」

「お前、この男好きだろう」

 断定的に言われて、視線を写真から反らす。


 昔、誰かに言われた事がある。

 もし付き合っている人に『昔付き合った人は何人いたの?』と聞かれても、答えちゃいけないって。

 厳密には〝付き合った〟訳じゃないけどさぁ……

「言わなくても解るんだよ、馬鹿」

「いひゃひゃっ!」

 思いきり頬っぺたを引っ張られて暴れると、それこそ思いっきり羽交い締めにされた。

「今更、過去の男なんか気にする訳がないだろうが」

 耳元で囁かれて、身を竦める。

「何か変だからっ! 宇津木さんが宇津木さんじゃないみたいで恐いっ!」

「…………」


 それで……

 目を合わせた時、少しだけ驚いた様な顔をしたのは何故でしょう?


「お前って、ちゃんと付き合った奴……いるのか?」

「はぁ?」

 知ってるじゃないか。

 宇津木さんと付き合う前に、坂口さんと付き合っていたじゃないか。

 よもや忘れたとは言わせないよ?

 泣かすなとか、普通に言ってた癖に何を言うんだ。

「間違えた」

「ん?」

「抱かれた事、あるか?」

「何を真面目に聞いてるんですか──!!」

 しかも、淡々と何を聞く!?

 普通に聞くことじゃないよね!?

 ないだろうさ!

 絶対にない!

「それならそれで、やり方が違うだろ」


 だから何をだ!


 思った瞬間に、ソファーに押し倒されていた。
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