シャッターの向こう側。
 ……これなら、私にも解る。


 解りすぎるくらいに解る。


 これは、あれだ。

 彼氏と彼女なら、たぶんいつかは通る道だね☆


 じゃなくてさ。


 ただね?


 ただ……さ。


「普通あんな流れから行かないでしょ!」

「そうか?」

「宇津木さんて、いつも突然だし! キスだって……」

「キスだって?」

 超至近距離でニヤリと笑われて、何となく黙る。


 これは……

 これは危険!?


 思ったら、


「……ぷっ」

 吹き出された。

「お前、緊張し過ぎ」

 ポンポンと頭を叩かれて、引き上げられる。

「夕飯作るな」

 そう言いながら、立ち上がる宇津木さん……


 て、ふざけるんじゃないわよっ!

 ちょっと酷すぎない?

 ちょっとだけその気になったのに、寸留めって何!?

 いや。それじゃ私は欲求不満か。

 そんな事はないない。

 だいたい、私は、

「そういうの淡泊だし」

「俺が?」

 キッチンの手前で振り返ってる宇津木さん。

 それはそれは不機嫌そうな顔で……

「ちちちちが……っ」

「今から試してみるか?」

「滅相もない!」

「断るくらいなら誘うな」

 って、そもそも誘ってないから。

 アレを誘いととるのは、いくらなんでも私でもしないよ。

「…………」

 宇津木さんはどこまでも解りにくい……

 いや。

 解らない男だ。


 我が道突っ走るのは知っていたけど、どこまでも突っ走るのかな。

 それはそれで楽しいけど。

 よく考えてみると、ちょっと不思議。

 そんな不思議な人と、付き合っちゃえる私も不思議か。


「…………」


 考えてみると変な人だよね。

 こう言っちゃなんだけど、ホントに私のどこがよくて付き合ってくれてるんだろ。

 私を好き? って聞いたら、多分とても簡単に『悪いか』とか、堂々と言うけど。

 とても嬉しいし、かなり照れるけど。
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