シャッターの向こう側。
「おい」

 と、キッチンから声がかかって顔を上げる。

「はい?」

「何か言いたいことがあるなら、スッキリ言ったらどうだよ?」

 スッキリ言えって言われてもねぇ……

「私のどこに好かれる要素があるのかと」

「さぁな」

 さぁなじゃなーい!

 さぁなって、彼氏の言葉とも思えない!

 普通、君はステキだからさ……とか。

 可愛いから……とか。

 そう言わないか!?

 そう言うと思うんだけど!


 いや。 宇津木さんに言われたらビックリするかもしれない。


 間違いなくするね。

 似合わなさすぎる。

 どちらかと言うと、多分背筋に冷たいものが走るかもしれない。

 うん。 我ながらゾッとするに間違いないゾ☆

「…………」

 自分で自分が寒い。

「まぁ、お前を嫌う奴は少ないんじゃないか?」

 ん?

「仕事は一生懸命やる、だけど鈍臭いし。いつも笑ってるし、たまに不気味だが」

「褒めてんですかね?」

「それとお前は一言多いな」

「お互い様です」

 そう言うと、宇津木さんはスパゲティーの袋を開けながらニヤリとした。

「そんな事を言われたら、俺も不思議なんだが」

 深いお鍋にお水を入れ、それを火にかけてから振り返る。

「お前は、俺のどこがいいわけ?」

 え。

 ぇえ~?


 言わなきゃダメ?

 言わなきゃイケナイ?

 それって、本人目の前にして、ちょっと言いにくいんだけど。


「俺は前にも言ったと思うが」


 淡々と夕食を作りながら、宇津木さんはニヤニヤと笑ったままでいる。

 言われた事……あったかな。

 考え込む私に、

「どこ行くか解らない様な奴に隣に居てもらいたいと思ったら、しっかり捕まえておかなきゃならないだろう」

「発想が子供扱いな気がする」

「ちゃんと女扱いしてやるよ」

 軽く言われて、少しだけ固まった。


 それも、微妙かも。
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