シャッターの向こう側。
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 つき合い始めてしばらく経つと、朝目覚めて〝好きな人が目の前にいる〟……。

 その事に、ちょっとは慣れてきた自分に感心する。


 そしてお互いに、お互いの家に泊まるようになってきて……

 少し気付いた事があったりもする。


 それは、朝ご飯を食べている時の事。


「宇津木さん?」

「なんだ」

「今日はグッスリ寝てましたね」

「……徹夜だった。寝させろ」


 いやぁ……そりゃ構わないんだけどね。

 だいたい宇津木さんて徹夜が多いし、そういった意味ではけっこう生活面が乱れてるし。

 寝てくれるのは、全然構わないんだけどね。


「よく寝た朝って、必ずコーヒーしか飲まないよね?」


 そう言うと、無言になった。


 思えば変だ。

 泊まりに来ると、何故か眠らない日がある。

 別に、持ち帰っての仕事をしてる訳でもない。

 いや、仕事をしてるなら何となく納得するんだけど……


 宇津木さんて徹夜すると、目がウサギさんみたいに赤くなるから、すぐバレるんだな。


 それはそれで恐いんだけど。

 可愛いって言えないトコが宇津木さんらしいって言うか。


 宇津木さんがウサギさん。


 なんか語呂合わせみたいじゃない?

 ウサギさんが宇津木さん。

 いやいや、やっぱり宇津木さんがウサギさんで……

 宇津木さんがウサミミしたら、可愛いのか気持ち悪いのか、たぶんよく解らな……


「お前」

「……え?」

「またろくでも無いこと考えてるだろ」


 失礼だなっ!


 ろくでも無いコトとはなんだ!

 ろくでも無いコトとは!!

 確かに言えないコトだけど!

 正直に言ったら、たぶん抓られるだろうけれどもっ!


 眉をつりあげたら、


「解った」


 お箸に手を伸ばした宇津木さん。


 おや?


 意を決した様に、ご飯を食べ始めた。


 いや。

 そこを怒った訳じゃ、実はないんだけどね?
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